こんにちは。日本まなび将棋普及協会事務局の池田(将棋の森15級)です。
2017年6月24日土曜日。私は、吉祥寺にある将棋の森のテラコヤ教室に通う子どもたちの3人のお母さんに、聞き手としてインタビューすることができました。
お忙しい中、お時間を合わせていただき、それだけでも感謝しきれない気持ちでいっぱいだったのですが、気づけは3時間の超ロングインタビューに!
しかし、みなさんも「普段こうしてじっくり将棋のことや子どもたちのことを話せる機会がなかったから、楽しかった」と言ってくださいました。
<目次>
序章
将棋を勧めたい!~将棋を習う子のお母さんだからわかること~
1.将棋を始めてよかったこと
①たくさん負けても逃げない~将棋を通して成長した心~
②他のゲームはすぐ飽きるのに…
③礼儀作法
④将棋を通してできる「子離れ」~親の成長~
⑤将棋をする子どもたちへの接し方と、子どもたちがのめり込む理由
⑥みんなで成長する~和先生とこどもたちとお母さん
⑦全身全霊をかけて
⑧俺にはこれがあるんだ!!という自信
⑨「プロ棋士」というこどもたちの夢
⑩盤を挟むからできる、コミュニケーション
2、将棋を教えるときに大事なこととは
①その子の目線に合わせた和先生の教え方
②まなび将棋のニーズ~これなら私でも教えられるかも
終章
山崎さんは、一人っ子の洋介(ようすけ)くんのお母さん。洋介くんは、小学校3年生で現在3級。幼稚園の時から和先生の教室に通っていて、山崎さんご自身も将棋を指されています。
田口さんは、3人のお子さんをもつお母さん。小学校5年生の和樹(かずき)君と、小学校3年生の香奈(かな)ちゃん。駒の動き方から和先生に習い、和樹くんは現在1級。香奈ちゃんは11級。田口さんご自身は将棋は指せない。
和樹くんは、初めて和先生の教室に通ったとき、目をキラキラさせて「次も絶対行く!」と話したそうで、今もずっと和先生のもとで将棋を習っています。
池山さんは2人のお子さんはをもつお母さん。上の遼(りょう)くんは、小学校3年生で5級。おじいちゃんが将棋が好きで、おじいちゃんのおうちに預けていたとき、年長の夏休みに将棋を教わったのがきっかけ。
そこから、自分で調べて駅前の将棋教室に通ったけれど、指しはするけれど教える感じではなかったため、なかなか楽しく通えるところが見つからなかったそうです。しかし、山崎さんの息子さんの洋介くんが和先生のところに通っているのを聞いて、通ったところ、楽しい!と感じられ、現在も通い続けています。
弟の翔(しょう)くんは年中さんの時から、お兄ちゃんと一緒に通い始めました。
池山さんご自身は将棋は指せませんが、将棋が指せるようになりたいな…と思う気持ちが強いそうです。
和先生との出会いが長いみなさんは、和先生のもとで将棋を習うお子さんたちを通して、普段から感じていることを、ざっくばらんにお話しいただきました。
1.将棋を始めてよかったこと
①たくさん負けても逃げない~将棋を通して成長した心~
▲聞き手:日本まなび将棋普及協会事務局 池田(将棋の森15級)
将棋を指すお子さんをもつお母さん3人の、インタビューシリーズです。
前回は「将棋を勧めたい理由」をリアルにお話しくださいましたが、今回はさらにその理由が深まる内容になっています。
▲将棋を始めて、よかったなと思うことはありますか?
池山さん(以下:池)「うちは、ふたりとも(遼くん・翔くん)将棋やっているんですけど、将棋をやってよかったなって思うことは、上の子(遼くん)の方は、もともと失敗するくらいだったらやらないほうがいいというか、性格的にも怖がりで慎重で、ダメそうだったらやらないで、手を出さない!というタイプだったんです。
失敗をすごい恐れるし、慎重で怖がりで逃げちゃうところがあったんですけど、将棋を始めてから、将棋って負けるじゃないですか、最初始めたときはおじいちゃんに負けて見られるのが嫌で、泣いて嫌がったりししていました。
本当に負けるっていうのが嫌だったんだけど、和先生に教えてもらうようになってから、たくさん負けても、逃げないで続けられるようになった・・・。将棋をやることによって、そういった部分も成長できるようになったなと思います」
▲それは大きな変化ですね。
山崎さん(以下:山)「子どもたちの性格を読んでくれるよね、和先生が」
池「そうそう、子どものタイプによって教え方も、しかり方も違うし、遼のそういう失敗が怖いというところもわかってて、また、兄弟の性格の差もよくわかってて、ご指導してくださる。
上の子の方は、ゲストにきたプロ棋士の先生のような尊敬できる人に、一言でも褒めてもらったらやる気が出るのではないかな?と先生がおっしゃってて・・・なんかそういうこの子にはこういう言葉がけをよくわかってらしてすごいな~と思いました」
田中さん(以下:田)「最近宿題も、和先生カスタマイズしてくれてない?その子一人一人のやる気がでるようになってて、それはすごいな~って。うちは、怖いもの知らずで、おだてれば乗るタイプなので、すごい上手に載せて下さるんですよ」
▲田口さんは、和樹くんや香奈ちゃんに対して、何か感じる変化はありますか?
田「和樹は、勝っても負けても嬉しい。やれることが嬉しい。負けても泣いたことがない。プロ棋士さんは、泣いている方が強くなるって聞くんだけど、うちの子は負けても次って感じで」
山「切替が早いのはすごいことだよ」
田「もっと押し込めてやって~って思うんだけど。逆に下の子の方(香奈ちゃん)は、遼君と同じような子。和先生におっしゃってもらって笑わせてもらったのが、”香奈ちゃんは私が見てきた中で、一番の慎重さです。自分の力を信じていない”って言われて、確かにそうかもしれないって思いました。山崎さんの子と幼稚園が一緒だったのでわかるんですけど、3年間毎日会っているのに、山崎さんに挨拶ができない子でした」
山「なかなか心を開いてくれなかったよね。でも、道場に行くと、すっごいしゃべってくれるですよ」
田「将棋をやって変わったと思う。ひとと向き合って、自分の弱いところと向き合わないといけない強さというのを、将棋で教わったなって思う。和先生はそういった彼女の性格をわかってくださるので、もう全部おまかせします!って感じで。どんどん叱ってくださいって感じです。
先生の見方、指導を聞いていて、とても納得いくし、私自身も、第三者から言ってもらえてとても育児の参考になるんです。こういう風に見てもらって、引き出してもらえることによって、ぼやっとしていたことが明確になってくるので、私も、彼女に改めて向き合えたなって思います」
山「将棋を指していると、自分とも向き合うし、相手とも向き合うから、自分のことをよくわかってくるのかもしれないね~。慎重だったりというのも、指し手でわかってくるのかな~って」
池「そういうのすごいな」
山「負けそうになると、諦めてしまうとか、わかるのかもしれないね~」
池「将棋を習ってよかったことは?って子供に聞いたら、遼は、”よく考えるようになった。将棋以外でも。” と。翔は”楽しいことが増えた。でも楽しいのと、怖いのがある。怖いっていうのは負けること。”
”じゃあ、怖いけどやめたいとは思わないの?”って聞いたら、”辞めたいとは思わない。でも、楽しいのと怖いのがある。”って言っていました。
やっぱり、5歳くらいの子が、負けるはすごく嫌なことで、体験したくないことなのかもしれないけれど、やっぱり勝ちたいから続けたいっていう気持ちをもっているんだな~って」
山「私の弟もそう言うの。将棋やらせていると、考える癖がつくというか、考え続ける癖がつくのがいいって。
わたしも将棋を勉強しはじめて、考えてもわからないときは、いいや適当にやっちゃえって思うんですけど、それじゃいけないんですけど(笑) でも、詰将棋とか実戦も、考えられるところまで自分で考える癖がつくんだろうなって。
ほら、ゲームとかは、ちょっと下手にするとリセットとかもできるけれど、将棋ってどんな劣勢になっても、それは自分の責任で、自分のやっちゃったせいなのを、全部自分で受け止めたうえで続けないといけない、考えないといけない。
そういう精神的な強さ、考えないといけない強さみたいなものは、将棋でしか身に着けられないんだなって思います」
池「私も全然弱いくて、それでもやっているのですが、将棋の対局の終わりの方で、明らかに劣勢でつらいけど、これで終わりにしたいけど、それでも最後まで指さないといけないというとき、確かに心が強く、それでも止めちゃわないで、相手がいることだから、ネット将棋だと相手が目の前にいないから投了しちゃうことはあるかもだけど、目の前にいるのにやめて出て行ってしまうのはいけないことだから、だからそこはすごく辛抱強くなるところなのかなって。」
山「負けてても、最後まで、最後の最後までわからないっていうのがあるから、そこはあきらめないでやるっていう気持ちを持ち続けるっているのはすごいことだよね」
池田自身も2017年5月に行われたショウギナデシコという大会に出場しましたが、劣勢になったときのあの辛さは、お話を聞いていて痛いほどわかりました。
劣勢になっても、目の前に対局者がいる。かつ、ナデシコは団体戦だったので仲間が横で戦っているのため、投げられない。いや、投げたくない。
だからこそ身についたのは、「この局面で探せる、私なりの最善手を探そう」「仮に勝てなくても、次につなげられるよう一生懸命考えよう」という姿勢。
将棋を指していると、私のような15級であっても、やはり負けると悔しいです。それは誰しもが一生懸命指しているから。「なんであんな手指しちゃったんだろう」って心で泣きながら、対局をしていますが、だからこそ自分と向き合い、相手と向き合い、最後までやり抜く辛抱強さが身に付くのだと感じます。
それは、将棋を指す子どもたちをみているお母さんたちにも、強く響いていました。